2-1.
「…でもさ。俺達、もう、ずいぶん一緒に住んでいるからさ。そろそろ。」
「別に形にコダワラなくていいじゃん。することだってしてるし、一緒に、ご飯も食べているし。一緒にお風呂も入ってるし。」
「子どもとか、欲しくない?」
「欲しくない?どーせ自分の子どもじゃないんだから、いらない。」
「それはそうだけど…。」
「自分の子どもだったら、結婚して作ってあげてもよいけどね。結局さ、血の繋がってない、イデンシを分かち合ってない子どもと一緒に過ごす意味ってあるの?そりゃあ、勿論、ミーム?とか?私達が育てた!とか、思想とか、そんなのが受け継がれるかも知れないけど、そういうの、私、興味ないんだなぁ。自分の子どもだったら、全然、育てて良いのだけど…ねぇ?【省略】?」
「…【省略】はないけどさ。」
はいはい。この話をふってくると、最終的に私がウンチクをこね回して、ツグを黙らせてお終い。口げんかに至らず。一応、誤解されないように言っておくと、この街の人間は、全員タネナシで不稔物?【省略】だから、子どもは作るんじゃあなくて貰う。結婚したら子どもを貰う権利が発生。子どもを授けて下さるのは、天にお住まいの麗しき方々。会ったことないけど。
あの街とこの街は1本のエレベーターと7本のエスカレーターで結ばれていて、子どもはエレベーターで降りてくる。うーむ。上手く説明できたかな。頂く子ども、私達も、ようは余り者なんだって。届けられる子ども達は、あの街に住めなかった子どもで、私も元々そうだった。親じゃなくて孤児院で育ったけど。【省略】降りてくる時に排除されちゃう。らしい。元からあったかどうかも疑わしいけど。
「じゃあさ、これだけは分かってよ。結婚とか、子どもとか、言っているのは…一緒になりたいんだ。つまり、愛してる、愛してるんだ。」
はいはい。分かってますよ。口には出さないけどね。